花とシカ

西丹沢檜洞丸の山開きの季節、丹沢自然センターからツツジ新道に入ると、白い花のウツギと装飾花のガクウツギ、
ゴーラ沢出会いでは、オオバアサガラの白い房状の花が垂れ下がり咲いています。
沢を渡り急な登山道に入ると、ヤマツツジの花が見られ、ブナ、ミズナラの冷温帯落葉広葉樹林に入ります。
花の多い年は、登山道にトウゴクミツバツツジの赤紫色とシロヤシオの白の花弁が散り落ち、絵模様のジュータンが敷かれます。
その中にツクバネウツギの筒の花も見られます。
標高一一〇〇メートル付近にまで登り、稜線に出ると展望が開け、初夏の残雪の富士山が眺められます。

定年時代鹿檜洞丸画像H18.2からH18.6まで 175 (19)
さらに急坂を登り切ると、平に開けた木道の両側にマルバタケブキとオオバイケイソウの群落、
リョウブ、コミネカエデ、ヒコサンヒメシャラ等の高木の中に立ち枯れのブナが目立ちます。
ここはツツジ道で、山頂までトウゴクミツバツツジとシロヤシオが多く、
六月初旬まで白色と濃赤紫色、ブナの萌黄色がすばらしい絵模様を奏でております。
昔は霧の檜洞と言われ、霧にかすむツツジも神秘的ですばらしいものですが、
近年はその霧に包まれる日も少なくなりました。
一九八〇年頃から檜洞丸のブナの立ち枯れが目立始め、
シカの食害と合わせて植生の衰退が激しくなりました。
それまでは、山頂付近はヤマトリカブトとテンニンソウの群落でした。
シカが増えて毒のヤマトリカブトの花まで採食するようになると種ができず、
株更新ができず、花が少なくなるためアブ、ハチが飛ばなくなる。
結果、生態系の悪循環となる。テンニンソウも開花時になるとシカは花だけ採食し同じ循環になりました。
今日、檜洞丸でもテシロの頭付近でもシカの食べないオオバイケイソウとマルバダケブキの群落となっています。
また、シカは冬の食糧確保が死活問題で、
丹沢全山に生えている常緑のスズタケも増えたシカの採食で地表がむき出し、
林床の植物生態系が衰退しています。
丹沢山系でも他県の山でも同じですが、植生保護柵だけでは植生は守れず、
増えすぎたシカ問題解決が丹沢再生の課題となっています。
(今年のトウゴクミツバツツジとシロヤシオは山開き日には、すでに散っていました)

(伊東 健二)


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