タブノキ

湘南をよく歩く。
ボランティアで鎌倉のハイキングコースのパトロールや寺社の裏山の山仕事などにかかわっていたり、
自然観察会で里山や鎮守の杜を訪ねることも多い。
そこでたびたび出会うのがタブノキの大木だ。特に海に近いところでは顕著だ。
タブノキは朝鮮半島南部、沖縄県から青森県まで分布し、
常緑広葉樹としてはもっとも北まで分布するもののひとつ。
伊豆の熱海付近と若狭湾を結ぶ線の北側では、関東地方の内陸部を除いて、自生地は海岸沿いに限られる。
これは「海」という冷めることのない熱源の影響と考えられている。
一方、南側では海岸を離れて山地にも生育し、海岸付近の優占樹種のひとつ。
材は線香や黄八丈の鳶色の染料の原料として用いられ、
南西諸島では丸木舟として古くから終戦直後まで使われていたようだ。
神奈川県に幹周り9mでタブノキ日本一の巨樹があるのをご存じだろうか。
地元、清川村では「煤ケ谷のしばの大木」とよばれ、
樹高12m、推定樹齢500年、神奈川県銘木100選に選ばれている。
「道の駅清川」近くの茶畑の中に、複雑な数本の株立状で枝葉を広げている。
先日、現地で地主と思われる古老から、昔より樹勢が衰えてきたと聞かされた。
樹洞にニホンミツバチが営巣していたのが印象的だった。
タブノキの枝葉はこれといった特徴がないので、それだけで同定するのは難しい。
個性のある冬芽を見つけるのが確実だ。タブノキの冬芽
瓦重ね状の芽鱗に包まれた冬芽で鱗芽という。
この季節、赤みを帯びてまるまると成長し芽吹きも近い。
芽吹くと重なった芽鱗の間から黄緑色の花序と紅色の若葉が展開し、
これもまた見応えがある。
常緑広葉樹の大木に出会って、この木なんだろうと思ったら、
冬芽を観察してみよう。タブノキの可愛い冬芽を確認できれば楽しいですね。

(山路洋護)


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