暑く忙しかったこの夏のご褒美に、仲間と富士山麓に行く機会を持つことが出来ました。そして、最後の日に前から行ってみたかった、まなびの森を訪れることが出来ました。
地図で確認すると、富士山頂から約8キロ南、駿河湾までは南に約19キロという位置です。このあたり夏に霧や雨の多い訳が良く分りました。駿河湾からの温かい湿気が富士山にぶち当たり、雨や霧を生じさせるのです。多分冬はこの逆の現象が生じるのに違いありません。
約90haの国有林を、住友林業(株)が借り受けて1998年から保全活動をしているとのこと。その2年前の台風で当地域の森がヒノキの人工林を主体に大きな被害を受けたのがそのきっかけだとのことでした。三分の一の部分が自然林として残っており、そこには樹齢数百年の多くの巨木(胸高直径が1M以上を巨木と呼ぶ)が存在するとのことで、一度それらの先輩たちに会いたいと思っていたのでした。
期待は裏切られませんでした。イタヤカエデ、ハリギリ、ブナ、ケヤキ、ミズナラ、モミなどの巨木が大きな存在感で散在しており、それらの間には若木が生育しており、理想的な森と言われる、高木複層林を形成しているのです。下界では暑く晴れているはずなのに、ここは霧が走り、しっとりと湿った涼しい森の空気に満ちています。そして、巨木の一部は倒木となり、苔をまとい、時にびっしりとキノコを付けているのです。
森の輪廻転生の上で、キノコが倒木を分解し有機物を作り、それが再び樹木たちに吸収されて森が再生してゆくという、「森林生態系」を感覚として見せてくれる森でした、この森は。いつの間にか、穏やかで快適な気持ちになって森の中を彷徨していました。
ひとつ心配になったのは鹿の害です。鹿を頻繁に見かけましたし、時に林床の植生が乏しくなっている場所もありました。早めに手をうたないと、若い世代の樹木たちの生育に大きな影響が出そうで、心配になりました。(佐藤憲隆:H17年度会員)
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