地球交響曲、これはガイアというコンセプトに深く共鳴した、龍村仁監督によって製作されている、シリーズ構成のドキュメンタリー映画で、既に第八番まで完成し、現在は第九番が製作中である。
この映画で共通して語られるコンセプトは、「全ての存在は繋がっている」および「地球の声が聞こえますか?」の二つであり、私も共鳴しているのであるが、特に前者のコンセプトについて、私が感じる事象を述べてみたい。
地質学を専攻した私は、森の世界に入る前はもっぱら地質と趣味の山登りに時間を割いていた。森の世界に関わっているうちに、それらとの距離が大きく狭まっていった。
プレートが地質構造を作り、地質構造が地形や気候を作り、地形や気候が森を作り上げたという連環の存在を学び、体感した。
典型的な例がヒマラヤ山脈、4000万年前からインド亜大陸を乗せたプレートが北側のユーラシア大陸にぶつかって潜りこみ、ユーラシア大陸を押し上げ続けることにより、巨大なヒマラヤ山脈を作った。そして、インド洋の厚く湿った空気はこのヒマラヤ山脈に遮られ、偏西風に乗って東に流れを変え、東南アジア一帯のモンスーン気候をもたらしたというものである。モンスーンの末端付近の日本では気候はマイルドとなり、四季・二十四候・七十二節季とも形容される、繊細で豊かな気候と森が形成されたという実に壮大なストーリーなのだ。
この話のミニチュア版が丹沢山地で、(私の居住する)伊豆半島を乗せたフィリピン海プレートが日本列島にぶつかることによって出来たもので、それは200万年前から現在まで続いている。
さらに話を続けると、災害の元凶として認識されている火山、地球表面の三分の二を占める海洋の水の殆どは過去の大規模な火山の爆発によって地球内部から供給されたことが分かっており、また、生命の起源も海中の火山活動に求めることが出来、火山のもたらす様々な元素が生物の生育に必須であることも明らかとなっている。
まさに、火山でさえも、「全ての存在は繋がっている」ということになるのである。
プレートの動きは年間数センチ、人の爪が伸びる程度の速度と言われている。この運動、プレート・テクトニクスがすべての事象と繋がっているのである。人類はプレートという手のひらで蠢いている存在にすぎないのではないだろうか!!
「巨樹がくれた夢(その10)森を歩くことは思い、考えること」へつづく
巨樹がくれた夢
2021年2月12日 佐藤 憲隆