伊豆の日暮らし(続・巨樹がくれた夢)
(その2)伊豆の桜
伊豆には桜のシーズンが二度ある。最初のそれは2月半ばからのほぼ一箇月で河津桜や伊東小室桜という早咲きのピンク色の濃い桜で特に河津桜は全国に広まり、早い春を象徴する桜として有名である。この桜の良い点はひと月くらいの長い間、散らずに長持ちすることである。この桜は寒緋桜と大島桜との混血種として、河津町の川の畔で発見されたもので、それが人の手によって増やされ、全国に広まったようである。ピンク色の源は沖縄等を原産とする寒緋桜の緋色を引き継いだものであろう。早く咲く習性も寒緋桜から引き継いだと考えられるが、何故か伊豆に咲く寒緋桜は、河津桜よりも10日ほど開花が遅いのである。
伊東小室桜は、伊東市のご当地桜のようであるが、知名度は低い。多分、花期や花からみても河津桜の流れを汲むものと思われるが、花が小さく、葉も多めで、河津桜にあきらかに見劣りすることから有名にならず、伊東市内のみに知られるのであろう。私は伊東市にお世話になっている関係から、この地味な桜を毎年愛でることにしている。
伊豆の次の桜のシーズンは、ソメイヨシノが満開となる3月下旬からの2週間ほどである。大体東京の桜の満開と同じころにあたる。もちろん伊豆にも沢山のソメイヨシノが見られるが、私が強調したいのは、里山を飾る桜の数々で、これについては次章の「山笑う」で述べたいと思う。
(2021年7月7日、佐藤憲隆)
(つづく)